2009/10/01

先が読めるアナログ ツール Mr.ベイツが40年前に考案した、ブリーディング・ボード「繁殖管理回転板」の操作性はハイスペックのコンピュータでも、到底かなわない。電源もいらず、ソフトを立ち上げる時間も、キー操作もなく、このアナログ・ブリーディング・ボードは眺めるだけで、この先1年間の見通しが一目でわかる。今日、或いは一週間の繁殖作業の善し悪しもパッと見てわかってしまう。回転板をひと目盛り(1日分)動かすと、今日はどの牛に発情が来るか、種付けになるのか?どの牛が分娩予定か?乾乳する牛はどれとどれか?種付け後40日以上すぎた牛は何頭いるのか?などなど、牛群の状況が離れた場所からでも目に飛び込んでしまうので、いちどブリーディング・ボードを使い始めると仕事を怠けようにも、「農場の現実」からの逃避ができなくなる、うまい仕組みなのだ。

 
この「木製の円盤」はただものではない。広く出回っている「ブリーディング・ボード」とは見かけも、使い方もかなり違う。回転するのは、牛番号を示すピンを留めている外周だけだ。表側はどの作業をするかのガイドが示されていて動かない。特許のなかで「これは・・・」という考案は4面4色の番号ピンであろう。

四角いピンは4面がそれぞれ赤、黄色、緑、黒に色分けされ番号がついている。分娩した牛は赤色に、種付けをしたら黄色に、妊娠鑑定すれば緑色に、乾乳牛は黒となる。つまり266番の牛が現在は種付け前なのか、それとも受胎したのか色をみればわかる。牛の個体識別のための番号と、色はその時の牛が置かれている状態をあらわしている。回転板は一日ごとに区切られているが、ピンは背に穴があり、数本のピンを同じ日のイベントとして重ねて差し込むことができる。おなじ日に10頭の分娩があっても10個のピンを同日に表示できるのだ。



発情発見 繁殖管理のためのツールなので、種付けをいかに上手くこなすかが一番の目的だが、種付けをした牛は常に3時の位置に挿し戻す。と同時にこのポイントが今日の日付を示す。2回目、3回目の種付けをしたあとも必ずピンは黄色面を正面にして3時の位置(今日)に戻される。不受胎牛は、この区間を行ったり来たりする。回転板は毎日ひと目盛り動かすので黄色のピンが21日目にさしかかったら発情監視をしなければならない。この周辺にあるピンの牛をよく観察すれば不受胎の発情牛は見つけられる。同様に40日を過ぎたら妊娠鑑定の時期だ。




妊娠鑑定 妊娠鑑定でプラスになったらピンの色を緑に換える。この地点からは次回分娩のカウントダウンがはじまる。ピンが挿されている回転板には分娩予定日が示されているので、数ヶ月先の分娩頭数が視覚的に確かめられる。緑色をしたピンが6時以降に隙間なく並んでいれば来期の出荷乳量を手中にしたようなものだ。少ないときは自家育成の種付け時期や初妊牛の導入も計画しなければならない。良くも悪くもこのツールによって早くから先が読めるので、余裕を持って手が打てる。 乾乳牛 分娩前60日の地点にピンが来て乾乳にしたら、今度は緑のピンを黒にする。12時の位置は分娩予定日である。お産が遅れても、数日早く分娩した場合も、ここではピンの移動を行われなければならない、つまり生まれた日にピンを赤にして12時の分娩日に挿す。ここからは種付けするまでピンは赤のままで観察する。 コンピュータは優れた道具だが、人の視覚はコンピュータ以上に多くの情報を鋭くキャッチする。


農場全体で何が起こっているか?今日しなくてはならない大事なことは何か?を知らせるアナログのシステム「Gestation Tabulator」(ブリーディング・ボード)は酪農家の強力な武器となる。あまりにも規模拡大の進んだアメリカではこのツールは次第に使えなくなってきたが、一台で300頭までは管理できるので、900頭程度までは複数台を併用して問題なく扱うことが可能だ。 輸入元:ナスアグリサービス]  


これまでの酪農は毎日の牛乳さえ出荷すれば十分な利益が発生したので、毎日の「繁殖の成績」を数値化したり収支を予測する必要性はあまりなかった。出荷量が減ったら、問題牛を肉で売り、そのお金で牛を導入すれば済む時代さえあった。しかし最近のように生産費が高騰し利益幅が減少してくると、「繁殖成績」こそが毎日の「平均乳量」を左右し、次の泌乳期の「出荷乳量」を決定することがはっきりしてきた。そして、昨日までの好成績は、決して明日からの好成績を保証するものではなく、今日、すぐ手を打つことだけが将来の結果に結びつく。


ブリーディング・ボードはその努力の結果を的確に、いつでも視覚的に確かめられる優れたツールだ。鑑定待ちの牛があと何頭いるか?今月あと何頭分娩するか?ノートをめくることなく、そこに色分けされたピンが、どれも次の分娩日に向かって整列している。 ブリーディング・ボード一台のお値段はノートパソコン一台の価格に匹敵する。それが高いか安いかは今後の成績次第ではあるが、だからといって農場で活躍するコンピュータがすべて無駄、あるいは不要というものではない。デジタル処理の良い点とアナログ・ボードの優れた面を併用すると、無敵の繁殖管理ができる。